古典液体論についての雑感:鈍感な結果から結構まともな結果でることもあるというお話



液体論では、密度揺らぎを検討するのに動的構造因子-たいてい、Dynamical Structure Factorの洋名で呼ばれるが-が議論される。 これは、非弾性散乱実験で散乱強度から測定可能でありよっく皆さんもご存知のことでしょう(ま、非弾性散乱実験は液体の研究用にかぎらないですけど)。 これを理論で見積もるのに、粘弾性理論と呼ばれる簡単な理論がある。 これを使うと、動的構造因子が割りとプラクティカルに計算できて結構いい、実験と半定量的に合ったりするのだ。 もちろん文句のつけようがあるゆえ、たとえばRKTなどハードな計算での追求が繰り広げられてきたのだった。 詳しくは、これなど見てください。

ところであまり強調されることがないが、動的構造因子から得られる情報、 もっというと動的構造因子よりも情報量が少ないもののひとつに、密度流の縦成分の相関関数のラプラス-フーリエ変換 (うっとうしい言い方ですな、まあ動的構造因子が密度のそれにあたり、両者は連続の式でつながっている)の励起モードの分散関係がある。 実験からも理論からも動的構造因子から得られるのだが、両者は非常によく合う。文句のつけようがある理論から出発したにしては、異様に上出来なのだ。 といっても、粘弾性理論で得られる動的構造因子は総和則と呼ばれるモーメント積分の4次まで正しいことを保障している。 言い換えると、ある程度のモーメント積分が理論的に正しい関係を与えるなら、つまりその次数では正しく閉じているなら何でもそれなりにまともな結果がでるのではないか、 とせこく期待するのは、人情というものである(おい、人情で研究かえ)。

いきなり気体論に飛躍しその視点で強引に見ると、通常というか正当にはBBGKYに似た係数についての微分方程式のチェーンを打ち切って到達する13モーメント法は、 そんなまじめな話を抜きにして単純に分布関数を4次のモーメントで展開したものだとみなしてやったとしても、結構よい近似になるはずという開き直りを得る。 ただし分布関数はそんなに合わないだろうが、必要なのはその積分値だとしての確信犯としての開き直りである。 ただこの視点からは、Gradご本人が主張するように非線形項(圧力や熱流に比例する項でないやつ)は小さいのだが、落とせない。

次元が低いせいか、こういった与太ばなしをこれまで聞いたことがないので書いてみましたが、他にもあれば知りたいところですな。





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