気体力学について



更新履歴

雑感のページ






a picture of Boltzmanna picture of Chapmana picture of Enskog
上は拾ったもので、もちろんBoltzmann、Chapman、Enskogの三氏である。
a picture of Harold Grad & Cathleen S. Morawetz
New York Universityでの、Harold Grad & Cathleen S. Morawetz



A. 気体力学の本や解説




A1. S. Chapman and T. G. Cowling:
Mathematical Theory of Non-Uniform Gases 3-rd ed., Cambridge(1970)
言わずとしれた、気体力学の記念碑的教科書。気体論やるなら絶対所有すべし。

A2. C. Cercignani:
The Boltzmann Equation and Its Applications, Springer-Verlag(1988)
数学的色彩にとんだ著作が多いひとだが、この本は(Chapman-Enskog法の使い方とかではなく)気体力学の概観を知るには、たぶん最も適していると思う。

A3. J. H. Ferziger and H. G. Kaper:
Mathematical Theory of Transport Processes, North-Holland(1972)
A1が高踏的であるという理由で、気体力学の教科書として書かれたもの。本当に親切な本。ただしモーメント法の解説なし。

A4. H. Grad:
Principles of the Kinetic Theory of Gases, Handbuch der Physik, XII, Springer(1958)
H. Grad氏のたぶん最も有名な文献。Chapman-Enskog法の特徴や気体力学についての薀蓄がつまった、素晴らしい解説。ただしなぜか、13モーメント法の解説は貧弱。

A5. H. Grad,
Comm. Pure Appl. Math. 2(1949)331
13モーメント法が知りたければ、この文献を読むべし。ほとんど全てのことが尽くされている。A4がよく文献として挙げられているが、ぜんぜん情報が足らない。
長いこと、引用が間違ってましたね。たぶんショックウェーブの奴を引いてました、失礼しました。いや、あれも有名なんですが。(2007/4/1)

A6. 曽根・青木:
「分子気体力学」、朝倉書店
知りうる唯一の日本語による完全オリジナルな気体力学の教科書。ただし、Chapman-Enskog法や13モーメント法を知ることはできない。

A7. A. N. Gorban and I. V. Karlin :
Methods of Nonlinear Kinetic, Encyclopedia of Life Support Systems(EOLSS), Oxford あるいはcond-mat/0306062
normal solutionの簡潔なよいレビュー。 ただし、具体的なことは、上記本その他で読む必要あり。 Direct Simulation Monte Carlo(DSMC)とかLattice Boltzmannの話は上記本に入ってないのだ、A6に一部はあるが。 非平衡の関係者でない人が、同じグループのメンバーを、飲み屋煙に巻くのに必要なことが書かれてあってとっても便利。 なおこの人たちは、Gradのモーメント法にもとづく膨大な量の仕事があり、ロスアラモスからいくらでも論文をダウンロードできるので、 最近のモーメント法の発展について知りたい方はそちらへまわって下さい。

A8. S. Harris:
An Introduction to the Theory of the Boltzmann Equation, Dover(2004)
初版は1971年とA3より古い。が、BBGKYなどからはじめて、バランスよくChapman-Enskog法とモーメント法の説明の後、気体力学の結果が纏まっている。 大局的な視野を得るのにちょうど良い。A2じゃきつい人にはうってつけ。

A9. T. I. Gombosi:
Gaskinetic Theory, Cambridge(1994)
モーメント法とChapman-Enskog法の比較が丁寧に述べられている。が、もっと詳しく知りたいのう。

A10. H. Struchtrup:
Macroscopic Transport Equations for Rarefied Gas Flow, Springer(2005)
モーメント法とChapman-Enskog法の比較が詳細に述べられている。 モーメント法を進化させたご自身の理論が、これまた詳しく書かれている。 また氏のHP(Struchtrupと打って一発で見つかる)では、原論文がダウンロードできる。 とりあえず、Phys. Fluids 15(2003)2668を落としてきて眺めて気に入った方にはお勧め。 もっと早く知っておればよかったのだがのう。

A11. 丹生慶四郎:
「ガス力学」 機械工学体系28、コロナ社
今年の市の図書館のリサイクル本放出会で発掘。あるんですねえ、日本語によるChapman-Enskog法解説本って。1974年発行だから絶版なのは致し方ないが、 じつに惜しい。わかりやすくコンパクトな説明で、教科書を一冊選べと言われればこれを挙げると思う。

A12. エヌ・エヌ・ボゴリュウボフ
「統計物理学における運動学の問題」、森・浦島訳、開成出版
B1に収録されている、BogoliubovのProblem of a Dynamical Theory in Statistical Physicsの訳。 買ったばっかで読んでないのに紛失してしまったと思っていたが、 ほぼ15年ぶりに本日棚裏にて発見される。オリジナルはすでに読んでいるが、これを機会に読み直すとしよう。 古典力学からBoltzmann方程式やプラズマでよく登場するVlasov方程式への移行といったBBGKYがらみの話のほぼ原点だ。

A13. Y. Sone:
Kinetic Theory and Fluid Dynamics (Modeling and Simulation in Science, Engineering & Technology.), Birkhauser, New York(2002)
A6の著者による本格的な気体力学の洋書。A6に内容を追加し、わかりやすく書き直した感じ(目次からはわからないだろう)。 A6と似た構成による最新作Molecular Gas Dynamics: Theory, Techniques, And Applicationsもあるが、見てないからよく知らん(目次はよく似ている)。 こちらの「ボルツマン方程式東西事情」よると、この先生(とおぼしき先生-筆者の読みでは)の講義は難解だったそうだ。 おそらくここに書いたストーリーを大真面目かつ厳密に講義したのだろう。 そういえば、A6はとっつきにくい本だった。日本語で書くときやしゃべるときと英語で書くときで差のあるひとなのかもしれない。 論文のほうは読んだものに関する限り明解でわかりやすくお手本にしたくらいだったし、本書も内容の程度を考慮すると相当親切に書いてあるのだが。

A14. C. Cercignani:
Rarefied Gas dynamics - From Basic Concepts to Actual Calculations, Cambridge(2000)
A2に近いテイストで記述されている。 関心のあるテーマをA2の次に読むとよいだろう。この分野の院生以上向け。

A15. R. Soto:
Kinetic Theory and Transport Phenomena , Oxford Univ. Pr.(2016)
教科書だな。B. 気体力学の解説を含む文献に入れるほうがよいが、ここにした。 R. L. Liboff:Introduction to the Theory of Kinetic Equationsっぽい親切な説明だから、輪講というより独習向き。

A16. G. M. Kremer:
An Introduction to the Boltzmann Equation and Transport Processes in Gases, Springer(2010)
よく書けていると思う。無理なく気体力学のミニマムが提示されている。Chapmam-Cowlingより親切でモーメント法が入っていて、Ferziger-Kaperより短い。定番になりそうだな。かつて追いかけた(その発展をさせてもらった)人の本なので、もう関係なくなったのにノスタルジーで買ってしまった。



B. 気体力学の解説を含む文献




B1. J. de Boer and G. E. Uhlenbeck ed.,
Studies in Statistical Mechanics Vol. I, North-Holland(1962)
あの有名なBogoliubovの論文を含む、驚異的に興味深いモノグラフ。

B2. B. C. Eu:
Kinetic Theory and Irreversible Thermodynamics, Wiley(1992)
上の区分にするべきか迷ったが、ここにした。アップデートされたモーメント法など素晴らしい内容と量。

B3. E, H, Kennard:
Kinetic Theory of Gases, McGraw-Hill(1938)
すごく古い本。新しがって統計力学のパートが入っているため、普通の統計物理の本のような印象だが、結構重要なことが書かれている。特に境界条件。

B4. R. L. Liboff:
Introduction to the Theory of Kinetic Equations, John Wiley&Sons(1969)
非平衡統計物理の本だなこれは。単行本としては、最も初等的で親切な13モーメント法の解説がある。他のパートも丁寧でわかりやすい記述。

B5. E. M. Lifshitz and L. P. Pitaevskii:
Physical Kinetics, Pergamon Press(1981)
  井上健男訳:「物理的運動学」、岩波書店
あのランダウ・リフシッツ理論物理教程(以下ランリフと短縮)の最終巻。残念ながら、お勧めできない。

B6. J. A. McNennan:
Introduction to Non-Equilibrium Statistical Mechanics, Prentice Hall(1988)
かっては公開されていて、フリーでダウンロードできたのだが今は知らん。Ref.に激しい誤植がある以外には文句の無い内容。個々の話の位置づけとRef.が書き込まれているため、すごく重宝する。非平衡統計物理の教科書としては、学部生には敷居が高いかもしれない。まあ、B10とともに読むとよい。これより先は、原論文にあたることになるだろう。Kinetic Theoryのパートも、結構読みがいがある。
注目!! 2009年8月20日現在で、フリーでダウンロードできました。ただ以前の奴は2M程度だったのが、今度は55M近くゆえなかなか落ちてこない。

B7. I. Prigogine:
Non-equilibrium Statistical Mechanics, Interscience New York(1962)
しばし待て。

B8. L. E. Reichl:
A Modern Course in Statistical Physics, University of Texas Press(1980)
  鈴木増雄訳:「現代統計物理」、丸善
高度に圧縮された、統計物理の教科書。大抵のことは書いてある。 後から見ると参考になるが、最初に見ると気体論のパート以外も相当とっつきにくい。ランリフ本と違った意味で上級者向き。 最近、厚くなって読みやすくなったという噂はあるが、手元に無いからわからん。

B9. F. Reif:
Fundamentals of Statistical and Thermal Physics, McGraw-Hill(1965)
  中山・小林訳:「統計熱物理学の基礎」(物理学叢書41)、吉岡書店
Chapman-Enskogとか13モーメント法に行く前に知っておくべきことが丁寧に書かれている(訳書では下巻)。他のパートもよい。

B10. P. Résibois and M. De Leener:
Classical Kinetic Theory of Fluids, McGraw-Hill(1965)
B4よりはるかに有名なので多くを語る必要はあるまい。Enskog方程式についての素晴らしい解説あり。

B11. G. H. Wannier:
Statistical Physics, Wiley(1966)
  西川恭治訳:「統計物理学」、紀伊国屋書店
B8とは違う切り口で、Chapman-Enskohg等に行く前に知っておくべきことが書かれている。例えば、マクスウェル粒子についてなどだ。

B12. D. N. Zubarev, V. Morozov and G. Röpke:
Statistical mechanics of Nonequilibrium Processes Vol.1 Basic concepts, Kinetic Theory, Akademie Verlag GmbH, Berlin(1996)
現代化されたBBGKYとでもいうべきな議論がこってりと書かれております。RET(下記参照)の導出は、できるはずだから演習問題としてやってみろとのこと。

B13. 北原和夫:
「非平衡系の統計力学」、岩波書店
非平衡統計物理の入門書。

B14. 北原・吉川:
「非平衡の科学I」、講談社
ウルトラミニマムなChapman-Enskogの解説あり。プレゼン用コピペにどうぞ。

B15. 中野・服部:
「エルゴード性とは何か」、丸善
気体力学の位置づけと変分法について、一読の価値ある小文がある。それとは別に、この本には言葉に尽くせない深みがあるので必見。

B16. 川崎恭治:
「非平衡と相転移」、朝倉書店
この本の3章には、ボルツマンメダリストによる、極めて明瞭で簡潔な気体力学の解説がある。液体論へ興味があるが、Boltzmann方程式関係には触りたくなかった方向き。 一方気体屋や非非平衡関係者で、Renormalized Kinetic Theory(勝ってに短縮、RKT)まで知りたい方はまずはC5参照。

B17. K. Huang:
Statistical Mechanics, 2_nd ed., John Wiley&Sons(1987)
この本にも、気体力学の極めて良質で丁寧な解説がある。たぶん、これ読んだらすぐにA1A3に入れるだろう。その他の部分も素晴らしい(特に相転移とスケーリング)。

B18.早川尚男:
「非平衡統計力学」、SGCライブラリー54 サイエンス社
予定では当HPで、この本の運動論的手法のパートに該当する内容をもっと砕けた調子で書いてみようと考えていたのだが、もう必要ないなあ。 気体論を研究するのでなければ、これで十分でしょう。当HPでやるとしても、モーメント法のインスタント解説ぐらいしかやることないが、それはA5で尽くされている (記述もそこらの教科書よりもはるかに親切丁寧、だからあえて必要ないゆえこの方法の解説がほとんどないのだ)。

B19.一柳正和:
「不可逆過程の物理:日本統計物理学史から」、日本評論社
買って持っていたが最近まで目を通してなかったので、気体論に対して相当量の記述がありかつ深いことを知らなかった(大損だ)。 B15の該当部分の記述を詳細に書いた感じだ。正直いってまだ未消化の部分が多々ある。 上記B18の内容が、頭の前頭葉に入った方でないとそもそも無理。

B20.林茂雄:
「移動現象論入門」、東洋書店
通勤がてら読んでるが、結構楽しい本だ。物理化学のセンスで非平衡現象をやさしく語っていて、読みやすい。 つまり、流体力学、熱力学、統計物理学および化学の視点をバランスよく使って解説してある。 非平衡統計物理のエキスパート以外の人にお勧め。

B21. C. H. Collie:
Kinetic Theory and Entropy, Longman Inc., New York(1982)
大学図書館(S.U.N.Y)の放出本。amazonで見つけて購入、送料込みで千円ほど。こりゃ古本屋が消えていくのも無理ないな。 内容は、新入生でも入門できる統計物理学(当然だが気体分子運動論がメイン)。だが、内容は豊富で教育的。低学年むけの外書購読用本にうってつけ。 Marcelo Alonso & Edward J. Finn:Physics, Addison-Wesleyを思い出した。

B22.市村浩:
「統計力学」(基礎物理学選書10)、裳華房
B21を除くと、「B. 気体力学の解説を含む文献」で挙げたものには統計力学のホントの初歩本がなく、ボルツマン方程式についてゼロから知るのに適当なものがない。 この本は全くの統計力学入門書でかつ第一章に親切で丁寧なボルツマン方程式の説明がある。今後刊行される統計力学や統計物理学の本でも、この話題は扱いが小さくなるだろう。 だから教育する立場の人は、持ってるといいだろう。

B23. A. I. Ajiezer and S. V. Peletminski:
Metodos de la Fisica Estadistica, Editorial MIR, MOSCU(1981) (注、タイトル英訳:Methods of Statistical Physics)
1990年にスペインの首都マドリッドの本屋で購入。当時日本円で1500ぐらいだった。もちろん原著はロシア語で、これはスペイン語版。内容は、古典量子両多体問題の基礎ってとこ。 ちょっと詰めすぎなうえ量子系(要するにグリーン関数論)が大部分だが、ボルツマン方程式についての漸近的手法に一見の価値あり。英語版があっても良さそうな本だ。 ただし説明は、玄人向き(あのAGDっぽい)。

B24. Bruce J. Berne ed.:
Statistical Mechanics, Part B:Time-Dependent Processes, Modern Theoretical Chemistry Vol.6, Plenum Press, New York(1977)
気体論からの濃い気体へのアプローチと液体論からの流体のダイナミックスへのアプローチがコンパクトに収録されたモノグラフ。 A3B10C5C6およびF8の該当部分を解説した形になっていて、 これ一冊でこの話題が概観できる素晴らしい本。日本では気体屋と液体屋が完全に分離していることが多く、両分野を統一的に理解している集団が非平衡統計物理屋だけなので、 この分野で質問に行ってたらいまわしにされたと感じた院生の人にはうってつけだ。それにしてもオランダは不思議な国だ。 ところでBeijerenはどう読むのだろう。SchoredingerやCercignaniやKnudsenをチェルデインゲルやチャルチニャーニやヌートセンと発音するコミニュティーにいたせいでわからん。 ちなみにベイヘレンと言ってたなあ。

B25.ゾンマーフェルト:
「熱力学および統計力学」(ゾンマーフェルト理論物理学講座V)、講談社
B22を見て、これと同じレベルの初等さで衝突項の取り扱い方を知りたい場合には、このゾンマーフェルト本の最終章を見るといい。 今回改めて眺めると、古典物理の説明ではこの理論物理学講座のできがよいとあらためて思った。





C. 関連する文献




C1. G. A. Bird,
Molecular Gas Dynamics and the Direct Simulation of Gas Flows, Oxford(1994)
表題どうりの本、必見。

C2. D. Jou, J. Casas-Vázquez and G. Lebon:
Extended Irreversible Thermodynamics, Springer(1993)
しばし待て。

C3. I. Müller and T. Reggeri:
 Rational Extended Thermodynamics, Springer(1993)
しばし待て。

C4. S. Sasa and H. Tasaki:
 J. Stat. Phys. 125(2006)125 or cond-mat/0411052
言訳:雑感のページで取り上げようと思っていたが、月日はながれ、cond-mat/0711.0246(PRLに受理されたそうだ)に最新の研究結果が出ている。 ならばそれも含めた解説なりエッセイを書けば良い、とおっしゃる意見もあろうとは思います。 が、私がcond-mat/0711.0246の内容に対して落ちこぼれてしまいました。 ただ著者の一人田崎晴明教授のWeb日記によると、斬新な内容でかつ高度に圧縮されていて、それゆえに一度リジェクトされたらしく、ハイレベルなものらしい。 (と伝聞調の文体で記述し判定は避けておきます。すいません。) というわけで、これに対する雑感はしばし延期します。 J. Stat. Phys. 125(2006)125 or cond-mat/0411052の方は、非平衡統計物理の歴史のレビューとしても優れているので、必見とだけ申し添えておきます。

C5. J. P. Hansen and I. R. McDonald:
Theory of Simple Liquids, 2_nd ed., Academic Press
まさに、液体論のバイブル。統計物理が好きなら、関係者でなくても魅了される内容だ。初版のほうが、入門書としてはバランスがよい。 ただしRKTは、第2版から収録(第3版があるとは思わんが)。

C6. J. P. Boon and S. Yip:
Molecular Hydrodynamics, Dover(1991)
より気体論屋むきなのは、こちら。液体のダイナミクスをじっくりと堪能ください。 ただしRKTは、Balucani&Zoppi氏の本も参照。MCT等についても同様。川崎さんのAnn. Phys(1970だったかな)とかまあ文献はいっぱいあります。

C7. 甲藤好郎:
 「伝熱概論」、養賢堂
伝熱学の教科書。実践的な熱のながれについて知りたくて手に入れた。

C8. 堀越源一:
 「真空技術」(物理工学実験4)、東京大学出版会
希薄気体の具体的実験法について知りたくて手に入れた(ただし古本で)。

C9. 蔦原・高田・片岡:
「格子気体法・格子ボルツマン法」新しい数値流体力学の手法、コロナ社
格子ボルツマン法について知りたくて手に入れた(ただし古本で)。わかりやすい記述でいいが、きっと内容は古くなっているのだろうな。著者もまえがきで進歩の速さに言及している。

C10. 小橋豊:
 「音と音波」(基礎物理学選書 4)、裳華房
音についての薀蓄を収集するために購入。





D. 各論的文献




D1. H. van Beijeren and M. H. Ernst:
 Physica 68(1973)437
Revised Enskog Theory(RET)の原論文。

D2. H. van Beijeren:
 Phy. Rev. Lett. 17(1983)1503
RETと通常のEnskog方程式(SET:Standard Enskog Theory)の違いは外力の有無で顕著になる。そのことを最初に言い尽くした論文。

D3. N. Bellomo:
 The Enskog Equation, World Scientific(1991)
知る限り唯一のEnskog方程式のみにページの全てをあてたモノグラフ。数学寄り。

D4. M. López de Haro and V. Garzó:
Physica A 197(1993)98
RETってなんじゃという方、必見。外力が無い場合での、普通のEnskog方程式との違いが一発で完璧にわかります。

D5. J. de Boer and G. E. Uhlenbeck ed.:
Studies in Statistical Mechanics Vol. V, North-Holland(1970)
気体中の音速についての歴史的モノグラフ。結局のところ今でも、この本のレベルから大して理解が進んでないじゃないかと俯くのみだ。 ちなみに最近のDSMC計算は、実験を相当定量的にも再現している。次(D6)参照。    

D6. N. G. Hadjiconstantinou and A. L. Garcia:
Physics of Fluids 13(2001)1040
この結果を、見事に再現し完璧な説明する気で格闘したことがあったのだが。うう。

D7. Harold Grad:
 Comm. Pure. Appl. Math. 14(1961)323
"The Many Faces of Entropy"というタイトルに引かれてコピーし、とうとう自らの無知を思い知る。すまんかった、HAROLD先生。 内容については、しばし待て。





E. 伝記それに当時の歴史など




E1. デヴィッド リンドリー:
 「ボルツマンの原子―理論物理学の夜明け」、青土社
Boltzmannの生涯を軸に、現代物理学が出来上がらんとする際の歴史の葛藤が書かれている。 しかし高校生が読んでわかるかといわれると、ちと厳しいのう。E5を読んで物足らない人向け。

E2. ブローダ:
 「ボルツマン」、みすず書房
命日にこの本が手に入るとは。
感想:少し人格的側面を持ち上げすぎ、というか物理的側面の書き込みが分量不足。E1のほうがお勧め。あのC. Cercignaniが書いた伝記も出版されているが (Ludwig Boltzmann: The Man Who Trusted Atoms)、アマゾンで4千円ちょいか。悩ましいのう。(2009/01/25、買いました、E7参照)

E3. ペラン:
 「原子」、岩波書店
誰でも名前は知ってる、歴史的名著。この時代のセンスを知るには丁度よい。ただ今では、化学の立場から原子の実在に迫った本と受け取るほうがよい気がする。 事実前半は、目からうろこが落ちまくった。もちろん、後世の非平衡の関係本はこの本の影響から逃れられないはずで、後半の統計物理的議論が単に新鮮に感じられなかっただけかもしれんが。

E4. 米沢富美子:
 「ブラウン運動」(物理学OnePoint 27)、共立出版
BoltzmannやBoltzmann方程式の解説ではないが、この時代の雰囲気を歴史べったりでなく知るには良い本だと思う。 著者はE3を読んで感激してこの本を書く気になったそうだ。

E5. 朝永振一郎:
 「物理学とは何だろうか」、岩波書店
上巻は古典力学について詳しく、最後のあたりから熱学に入って下巻で熱学と統計力学についてこんこんと語っておられます。 氏はこのあとすぐにお亡くなりになるのですが、この本に収録されている一般向け講演中で、今後の物理の発展として地球物理学に期待され、「日本沈没」の一読を勧めておられました。 先日、リメイクされた映画「日本沈没」を見て、ちょっと逝くのが早すぎたのではないかと思いました。関係ないですが、S. Chapman氏は広い意味で地球物理学者です。

E6. 江沢洋:
 「だれが原子をみたか」、岩波書店
中学生むけとなってるが、いまだと(文体だけ変えて)文系の教養課程用(これもなくなったが)向きだろうな。 さらに年配の方なら、ここ30年程の日本とくに首都圏郊外の風景の変化をあらためて実感してもらえるでしょう(あんな風に川遊びはもうできないよなあ)。 ちなみに私は、市の図書館で借りて読んだのだが、児童書のフロアーのさらに書庫にあったためつい最近まで存在に気づかなかったのだ(適当ではあるがいつも探していたのだが)。 怪著、吉田武:「虚数の情緒」、東海大学出版会に近い精神で書かれていて、必要な知識はすべて本のなかにあるが(力学の説明までやってる!)、結論は読者に考えるように仕向けてある。

E6. アブラハム・パイス:
 「神は老獪にして...」、産業図書
いわずとしれた、アインシュタインの伝記。とうとう買っちゃった(高いし、厚いし、重い)。まだ、統計物理学のパートまでしか見てないが、じつに濃い。私の誤解もずいぶん解消された。 しかし、一般向きではないな。E1では物足らないひと、とくに相対論にこだわりがあるひと向け。

E7. Carlo Cercignani:
 Ludwig Boltzmann: The Man Who Trusted Atoms, Oxford Univ. Press(2006)
物理の専門書と違って簡単に読めないかもしれない。だが、年始に英語に取り組む決意をしついでに購入した。TOEICだって受けるのだ。内容については、しばし待て。




F. 気体分子運動論から統計物理学への紆余曲折を知る文献




F1. 物理学史研究刊行会編:
 「気体分子運動論」(物理学古典論文叢書5)、東海大学出版会
よ、読みにくい。関係ないが、Enskog方程式の原論文(ただし英訳)も読んだがしんどかったのを覚えている。 A1が出るまでこの分野に日が当たらなかったのは、このせいかもしれん。 (Boltzmannの存在と原子の実在論問題を抜かすと、日はちゃんと当たってなかったように思える)

F2. 物理学史研究刊行会編:
 「統計力学」(物理学古典論文叢書6)、東海大学出版会
いつか手に入れようと思っている。たまに図書館等でぱらぱら眺めると、つい読みたくなるがきっと投げ出すだろう。 山本義隆氏に「熱学思想の史的展開」の続編として、このテーマで一冊お願いしたいところですな。

F3. L. Boltzmann:
 Lecture on Gas Theory, Dover(1995)
"Reprinted from Vorlesungen uber Gastheorie, volumes 1-2, 1896-8"とあるように、ご本人の著作。 ぱらぱらは読んだが、自分用には持ってない。誰か買ってくれ。

F4. G. Gallavotti:
 Statistical Mechanics, A Short Treatise, Springer(1999)
第1章の議論参照。コメントは、Lanfordの文献を手に入れるまでしばし待て。

F5. D. ter. Haar:
 Elements of Statistical Mechanics, Springer(1956)
  戸田盛和訳:「熱統計学」、みすず書房
最初の2章に歴史的にも詳しいBoltzmann方程式の解説あり。というか、この本は万事にわたり、歴史に詳しい。 エルゴード理論についての初等的で古いがちゃんとした解説あり。E5より先に進みたいが、Ruelle本でこけた人向き。

F6. S. G. Brush:
Kinetic Theory Vol.3, Pergamon Press, New York(1972)
2部に分かれていて、part1にこの時代までの気体運動学の歩みがゆったりと書かれている。part2は、ChapmanやEnskogの原論文(英訳)が収められている。手元に置きたい本だな。

F7. E. G. D. Cohen:
Physica A 194(1993)229
F6の最後にあるChapmanによる1966年の講演:The Kinetic Theory of Gases Fifty Years Agoのその後の30年を知るのによい。 ただし濃い気体への発展に焦点が当たっている。似たような内容で落とせる当面すぐ見れるのは次↓

F8. Matthieu H. Ernst:
arXiv:cond-mat/9707146v1
タイトルは、"Bogoliubov Choh Uhlenbeck Theory: Cradle of Modern Kinetic Theory"。





G. 気体力学(分布関数から出発しないもの)




G1. H.W. Liepmann and A. Roshko:
 Elements of Gasdynamics, John Wiley & Sons(1960)
玉田?訳:「気体力学」(物理学叢書15)、吉岡書店
しばし待て。

G2. 日本機械学会編:
 「原子・分子の流れ」希薄気体力学とその応用、岩波書店
工学部向けの入門書。G1に行くまえに、さらっと読むのがよさそう。 例えていえば、AGD:「統計物理学における場の量子論の方法」、東京図書(ウルトラハード)に行く前に ハーケン:「固体の場の量子論」、吉岡書店(たぶん世界一人にやさしい)を読むような感じ。
 
G3. 西田迪雄:
 「気体力学 -常温から高温まで-」、吉岡書店
G1と似た構成の本だが、より初等的かつコンパクトで式計算の省略があんまりなく、さっと読めてしまった。すごくおもしろい。 ただし、院生向けとなっている統計力学のパートは物理出身だと冗長に見えるかもしれない。どんな風に式計算が省略してないかは、 あの有名な砂川重信:「理論電磁気学」、紀伊国屋書店のグリーン関数とか電磁波の遅延ポテンシャルの説明のパートを想像していただければわかってもらえると思う。

G4. 森岡茂樹:
 「気体力学」、朝倉書店
B1とともに発見される。というか、所有していることすら忘れていた。 改めてぱらぱら眺めると、気体力学の解説としてはG3より初等的でちょっと扱う範囲が広いが薄い感じだ。 もちろんこちらのほうが圧倒的に先に出版されたのだが、説明の仕方が偶然にもG3と相補的だ。で、初めに読むにはこっちがいいかも知れん。 数式的には、こちらの方がしっかりしてるがテーマに深くつっこんでないから概論的に読めて便利だと思う。まあ、読者のバックグランドによるけど。





H. Relativistic Kinetic Theory(相対論的気体運動論と訳しとく)




H1. C. Cercignani and G. M. Kremer:
 The Relativistic Boltzmann Equation: Theory and Applications, Birkhaeuser Basel(2002)
これまでノータッチだった相対論的な気体力学を知るために購入。
気体力学について
By ガス屋

mailto


姉妹サイト: 電磁気学の教科書・参考書

カウンター